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大長谷命の時代③

激しい権力争いで次々と身内を葬って
大長谷命は第21代の雄略天皇となった

その争いで見せた無慈悲とも思える様子は
皇位についてからもその片鱗を見せる

地方豪族の屋敷が豪華すぎるからといって焼き払わせたり
盃に落ち葉を浮かべたまま献上したことに怒り下女を殺そうとしたり
横暴な姿を古事記の中で書かれている

その一方で女性関係は優雅に描かれている
皇后となった吉野の童女、丸邇氏の娘である袁杼比売(オドヒメ)に歌をうたいながら愛をささやいたエピソードもある

そんな中で、雄略天皇にまつわる悲しい恋愛物語がある

ある日、雄略天皇は美しい少女であった赤猪子(アカイコ)を見染めた
赤猪子に将来宮に召すと約束をして、その約束を忘れてしまった

赤猪子は、その天皇の言葉を信じて待ち続けて
80年も経ってしまった

80年もの年月は美しかった時代の面影はなくなり
赤猪子は雄略天皇に対して、女の盛りを無駄にしてしまったと嘆いた
雄略天皇は虚しく過ぎ去ってしまった時間を想いショックを受けたのだった

一方、政治的には強権を振るい
国民から恐れられた雄略天皇の相反する弱い姿も古事記では伝えている

ある日、雄略天皇が葛城山に登った際に
大きな猪が現れて、矢を放つと猪が追いかけてくるので
木の上に登ったというエピソードがある

同じ葛城山では不思議な体験をする
天皇と同じ扮装をした一行が向かいの尾根に現れた
名前を聞くと、葛城山の一言主大神(ヒトコトヌシノオオカミ)だと答えた

雄略天皇は、神と聞いて拝礼し物品を献上すると
その一行は山の麓まで降りてきて天皇を見送ったという

この二つの話は、雄略天皇と葛城氏の和解とも解釈できる
葛城山は葛城氏の山であり
一言主大神はその氏神だ
その氏神を雄略天皇が敬ったということで
和解したことを伝えるエピソードになっているという説がある

雄略天皇の妃である韓比売(カラヒメ)は葛城氏の出身であることから
その時すでに力は弱まっていて
敵対する意味もなくなったと思われる

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