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行方不明者の墓~一家族の決断~【4】

私は、以前から弟が生存していないのではないか?

と感じていた。

私は、霊能者でもなんでもないので

漠然とした勘でしかないのだが

しかし、もうこの世にはいないのだ…と感じるのだ

 

弟が生存していないかもしれない…というのは

家族にとって不謹慎な話なのだ

誰かが、「死んでいるかも…」と、思ったとしても

不謹慎だからと、言ってはいけない暗黙のルールがある

それが、さらに家族を苦しめているのだ

死の可能性をちらつかせたりすると

その者は、あっという間に薄情者のレッテルを貼られそうな気がしてしまうのかもしれない

 

しかし、5年ほど前から

私は、弟の死の可能性について言及し始めた

原因は不明なのだが

弟の話をすると決まって

喉の辺りに圧迫感を覚えるようになったのだ

これが何を意味するのか

霊的なものなのか?ストレスなのか?

私にもよくわからないまま

だた、何かしらの形で決着を迫られているような気がしていた

 

だが、父は死の可能性を言及することに嫌悪感を示していた

息子に生存していてほしいと願う親心はもちろんだが

父は子供のころ、占い師の誘導により母親が蒸発した経験を持つため

それがトラウマとなり

オカルトや、スピリチュアル的な話に対して

別な感情を持って嫌悪感を示すようなのだ

 

家族の間でも複雑な感情を持って

それぞれが、弟の失踪事件に対峙し

月日を重ね、その感情にも変化が見られてきている

 

私も、死の可能性を言及した後の解決策も持たず

みんなが、もてあまし気味にしているのと同時に

失踪事件を知っている他人は

口に出すことすらタブーとなってしまい

弟の存在すら薄れ始めてきている

 

もし、遺体がある状態で弟が死んだならば

20年後に、親戚や知人は

今のように、触れずに居続けることはあるまい

葬儀を行った死者なら

時と共に思い出として語られるに違いない

 

しかし、みな腫れ物にでも触れるかのように

弟のことは、誰も何も語らず

家族のみが生存の可能性のみ言及する

戸籍があるのに、誰にも語られない存在

失踪者は、残った者の思い出にすらなれないもののなか!

 

この理不尽な思いに答えを出し

同じ思いを抱いている失踪者家族に助言ができるように

逃げずにこの問題に向かってみようかと考え始めたのは

今から2年前の2008年のことだった

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